2011/09/29

レビュー(17)

★★★☆☆
Neo Ouijaってまだ活動していたのか・・・という感じの2010年作、Luca Cancielloというイタリア・ナポリ在住のマルチインストゥルメンタリストによるソロプロジェクト。

基本的にはこの界隈らしいブロークンビートに上物が絡むスタイルで、#6のようにスポークン・ワードが、#7のようにギターとベースらしきサンドが被さったりする。今更新しい手法でもないが、生っぽいスネアの音色にキックが硬くて重く、ブロークンビートによく合っているので、リズム面はなかなかタイトで創造的かつ魅力的。恐らく生ドラムだけでなく、様々な楽器をカットアップすることによって楽曲を構成しているものと思われる。

エレクトロニカ好きなら聴いて損はないのでは。ミル・プラトーが復活し活発に活動している今、Neo Ouijaが復活するのも悪く無い話。

Heaven and
Staubgold Germany
発売日:2010-05-11

★★★☆☆
Martin Siewert(efzeg、Trapist)、Tony Back(The Necks)、フェネスとの活動経験があるZeitblom、Steven Heather(efzeg)というニュージャズ系/電子音響ジャズオールスターとも言えるカルテットの2nd。ファーストも結構話題になりました。ただ、ここではお互いの音楽的ルーツを探るサウンドということで、あまりジャズ的色彩はなく、呪術的とも言える一種独特のサウンドを発している。

本人達はブードゥー的と言っているそうだが、確かに呪術的パーカッションをダビーなベースに乗せ、ギターとヴァイオリン?が異国情緒を描き出す#1、リズムがドラムマシン(エレドラかも)になる以外は#1と雰囲気が似ている#2、エレクトロニクスが全くエスノを感じない異質な空間を作り出している#3、ブルースギターの響く#4、ビートレスでハーモニカ、ギター、エレクトロニクスと主役がコロコロ変わる構造はフリージャズ的な、でもジャズ的触感は全く無い#5、このアルバムの中では比較的元気でポストロック/ポストジャズ的な、しかし独特のドラムスで徐々にリズムがずれてくる#6とどの曲も独特の世界を描き出している。

基本的にはメンバーに惹かれるポストジャズ/電子音響ジャズファンにアピールするサウンドだが、モノトーンのサイケデリックと表現したくなるようなフリーキーながら抑制の効いた出来になっており、実験的音楽を聞くリスナー全方位的に聴かれても良いサウンドだと思う。

Heaven And
Staubgold Germany
発売日:2008-05-27

★★★☆☆
2ndをレビューしたので1stも。メンバーは2ndと同じMartin Siewert(efzeg、Trapist)、Tony Back(The Necks)、フェネスとの活動経験があるZeitblom、Steven Heather(efzeg)の4人組。1stと同じドイツstaubgoldからのリリース。#2#5ではアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのAlexander Hackeがヴォーカルとして参加している。

どの曲も作曲された部分とフリーの部分が混在していると思われる。そしてニュージャズ界隈の人脈でフリー演奏もあるにもかかわらず、抑制されて大人しく聴こえる。この感覚は、SiewertのTrapistや関連プロジェクトRadianとよく似ている。この2バンドは基本的にフリーな演奏であっても、ひどく抑制されたもので、且つポストプロダクションが加えられ異形の電子音響ジャズと化している怪盤をリリースしている。ということで、このプロジェクトもSiewertが主導的役割を担っているのではないかと思われる。

#1は導入部を思わせるドラムスにシンセ?ドローン/パッドと大人しいギターが乗る。#2が件のヴォーカル曲で、ドロドロに融け合いモゴモゴしたサウンドからトライバルなドラムスに変化するバッキングに、独唱のようなヴォーカルが乗る。一応ラブソングなんだろうか?タイトル通り女性のことを歌っている。#3はやはりトライバルなドラムスに、呪術的に聴こえるギターの長弾きソロが乗る。比較的派手な曲。#4は作曲された短い曲。#5もヴォーカル曲。今度はある程度バッキングも声に合わせて演奏する。序盤のマーチングドラムのような演奏、そして次第にメタリックになり悲鳴を上げるギターが印象的。#6は恐らく骨格だけ決めてある、二本のギターとベース・ドラムスによる大人しめなインプロヴィゼーション。#7も#6とよく似た雰囲気。マレット系?の音がゆっくり連打され、それに合わせて抑制的な演奏が行われるが、後半はだんだん激しくなっていく。#8も似た雰囲気だが作曲された部分が多い。ブルージーなギターと徐々に空間を支配してゆく電子ノイズが印象的。#9もブルージーな短い曲。

やや気になるのはエンジニアリングで、なんというかステレオ感に薄くローファイに聴こえる。そして2ndに比べて比較的派手な印象がある。ただ自由度は2ndのほうが上か。Radian/Trapist周辺は興味深いサウンドで、もっと探ってみたい。Siewertもソロやコラボレーション作を発表している。

0 件のコメント:

コメントを投稿